<PR>
2011年02月24日

見物

 Uさんは、Dさんの鋭い指摘も響かないのか、怪訝そうな表情をして
いた。
 
 「とにかく、何でもええから、はよ作業に掛かってや。ハイヒールで
  しゃがめへんのやったら裸足にでもなったらええやん。」
 「汗、ダラダラかいて、とんだパーティーやな。」

皆、口々に言いたいことを言ってはいたが、黙々と作業の手は動いていた。
Uさんんは悪びれた様子もなく、白いパラソルをくるくる回しながら、
辺りを見回して立っていた。その姿に、ますますDさんは頭に来たようだ。
 
 「あんた、見物に来たんか?何もせんとそこに突っ立っていられても
  邪魔や。もう、帰りよし。」
 「まあ、来るには来たんやから、ええやん。Uさんも家は近いんやから、
  せめて靴でも履き替えて来はったら?」

 部長に言われて、Uさんは靴を履き替えに行った。しばらくして戻って
来たUさん、替えたのは靴だけで、やはりロングスカートにパラソルを手に
持っていた。

posted by たかママ at 23:58 | Comment(0) | 日記
2011年02月23日

軍手

  「どこかへ出掛けはるんとちゃう?」

 パラソルを握るその手はロング手袋でひじまで覆われていた。誰もが、
Uさんは出掛けるので、清掃の参加できないと断りに来たのだと思った。
部長の前に歩み寄ったUさんは言った言葉に、皆、呆れるやら驚くやら・・・。

 「あのー、私、どこをやったら良いんですか?」
 「ええっ! あんた、そんな格好で草引きするん?」
 「はい。そのつもりで来たんですけど、それが何か?」

横から、委員の中でも一番年配のDさんがイライラして声を荒げた。

 「あんな、皆、ジャージやらGパンやら作業しやすい格好で、このくそ
  暑いのに草引きしてんねんで。そのハイヒールにロングスカートで
  しゃがんで作業できるんか? その長い手袋は軍手か? その白い
  パラソル持ってて、どうやって草引くねん?」 

posted by たかママ at 23:12 | Comment(0) | 日記
2011年02月22日

白いパラソル

 Uさんは校門の向かい側の住宅地の地域委員である。他のメンバーより
学校に一番近い場所に住んでいるのに、まだ来ないのはおかしいと誰もが
思っていた。
 
 「午前中の涼しいうちに済ませてしまおうと、皆、早う集まっている
  のに、一番近いUさんがまだ来てへんやないなんて、どないなって
  るんやろ?」
 「いつものことや、まともに時間に間に合うたことないやん!」
 「そのうち、“遅くなって済みませ〜ん”て言いながら来はるって。」

皆、口々に言いながら、草むしりに懸命なっていた。じっととしていても
暑いのに、太陽は容赦なく、うつむき加減の私達の背中に照りつけ、炎天下
の地面に顔から噴出した汗がぽたぽたと滴り落ちるほどだった。
 
 「あっ、Uさんやない!」
 「そうや、Uさんやわ。それにしても、あの格好はなんや?」

 Uさんは、白のロングスカートにハイヒールという装いで、白いパラソル
を差してニコニコしながら、草むしりをしている私達に近づいてきた。

posted by たかママ at 22:43 | Comment(0) | 日記
2011年02月21日

メンバー

 U君のお母さんとは、学校の地域委員で同じ文化部のメンバーで知らない
仲ではない。メンバーの中でも、少し変わっていると廻りも認識していた。
最も、皆がその行動にあ然とした出来事があった。

 夏休みの終盤、新学期が始まる前の日曜日、クラスや学校の役員が総出で
校内の清掃をする決まりであった。
 父親達、男性の役員は、教室の机や椅子など、痛んだ箇所の修理や、女、
子供の手の届かない場所の掃除を担当。 母親達はグループ別に校庭の
草むしりなど。私達、文化部のメンバーはプールと学童保育教室の周囲を
担当することになっていた。

 真夏の照りつける太陽の下、親たちは帽子、汗拭きタオル、水筒の3点
セットを携え、スニーカーに動きやすいジャージやスラックスとお決まりの
格好で集まって、作業に取り掛かろうとしていた。メンバーの一人が、U君
のお母さんがまだ来てないことに気が付いて言った。
  
 「Uさん、まだ来てへんなあ。どないしたんやろ?」

posted by たかママ at 23:47 | Comment(0) | 日記
2011年02月17日

この親にして、この子あり

 U君の“Tシャツ、頂戴”攻勢に嫌気がさしたのか、タエは学校に
Tシャツを着ていくのを止めた。学校に着てこないタエに、U君は
しつこく聞いた。
 
 「何で、ビッグエッグ着てこうへんの?」

“U君があんまり欲しがるからや!”とも言えず、タエは困ったらしい。

 そんな事があった数日後、U君のお母さんに会った。彼女とは同じ地域
委員のメンバーで、知らない仲ではない。U君が、我が家を訪ねてきた
一件を話した。

 「ああ、そやねんてね。あんまり、買って買ってとやかましいから、
  ほんなら、タエちゃんに貰うたら?て言うたんやわ。」

“迷惑掛けて、すみません”とか、“ごめんなさい”でもなく、平然として
いる。この親にして、この子ありとは、この事かと納得した。

posted by たかママ at 23:17 | Comment(0) | 日記
2011年02月16日

お願い

 「おばちゃん、僕、どうしても欲しいねん。頼むし、お願いやから。」
 「いくらお願いされても、ダメな物はダメよ。」
 「そんなら、タエちゃんが飽きて要らなくなってからでええし、僕に
  くれるって約束して!」

U君のあまりのしつこさに危うく、“いいよ”と言いそうになって、ハッと
してしまった。とにかく、早く帰るように仕向けないと、私もタエも身動き
が取れない。

 「まだ家に帰ってないんでしょう? 早く帰らないと、お母さん心配する
  わよ。」
 「うん、でも、Tシャツが・・・。」
 「それに、君のお母さん、君がタエのTシャツを欲しがっているって知って
  るの?」
 「うん、おんなじものを買うて(こうて)って、言ったんやけどアカンて
  言わはってん。」
 「それじゃあ、君もあきらめるしかないわね。人の持ち物を欲しいからって、
  簡単にもらえる訳じゃないのよ。とにかく我がまま言わないで、今日は
  家に帰って、お母さんにもう一度お願いしたら?」

U君は、がっかりしたように、しぶしぶ帰って行った。

posted by たかママ at 23:29 | Comment(0) | 日記
2011年02月15日

その代わり

 「自分が東京ドームに行けないから、その代わりにタエのTシャツを
くれだなんて、無茶なことを言う、変な子ねえ。」
 
 そんなある日、タエの帰宅に男の子が一人付いてきた。タエはとても
困っているようだ。

 「お母さん、U君、付いてきはった。」
 「こんにちは、君がU君?」
 「うん、そう。こんにちは。おばちゃん、タエちゃんの東京ドームの
  Tシャツもらいに来てん。」
 「ええっ! それを言いに、わざわざ家まで来たの?」
 「うん、そうや。タエちゃんに、何回も言ってんけど、アカンって言わはるし、
  おばちゃんから、タエちゃんに言ってもらおうと思ってん。」
 「困ったわねえ。このTシャツは、タエがこの前東京に行った時に、お父さん
  に買ってもらって、とても気に入って、大事にしているのよ。簡単に、
  誰かにあげたりできないの。」

posted by たかママ at 23:56 | Comment(0) | 日記
2011年02月14日

Tシャツ

 思わぬ北海道の思い出話も出てきたが、この日は深夜まで、たくさん
のお土産を前に、東京ドームのゲームやディズニーランドの話題が尽き
なかった。

 お土産の中に、タエが自分のために、Kに買ってもらったTシャツが
あった。その白いTシャツは胸に大きな卵のデザイン化した絵がプリント
してあった。
 タエはこのTシャツがよっぽど気に入ったのか、この夏は洗濯した日
以外は、ほぼ毎日のように着ていた。
  
 タエのクラスに、このTシャツを欲しがる男の子が一人いた。タエが学校
から帰って、困ったように訴えた。
 
 「お母さん、U君が私のTシャツをちょうだいって、毎日言わはるねん。」
 「ええっ? なんで、タエが着ているものを?」
 「うん。U君もジャイアンツの大ファンやねんて。東京ドームにも行き
  たいんやけど、連れて行ってもらえへんから、だから、その代わりに
  Tシャツをくれって。」

posted by たかママ at 23:16 | Comment(0) | 日記
2011年02月09日

帰宅

 22時をまわった頃、ようやくKとタエが帰宅した。タエは思ったより
元気そうだったが、Kは疲労困憊して、げんなりした様子だった。

 「いやあ〜、疲れたなあ。参ったよ。なあ、タエ!」
 「うん、疲れたけど大丈夫。私、寝たから。」
 「でも、これまで、何度も電車に乗ってきたけど、こんなこと初めて
  だなあ。」
 「そういえば、まだタエが赤ちゃんの時、北海道でもあったじゃない。
  雪で電車が止まってしまって、後続の電車に詰め込まれてさ、大変
  だったことがあったじゃない。」
 「あった、あった。あの時は、お前におぶわれたタエがむずがるし、
  ぎゅうぎゅう詰めで、立ちっぱなしで札幌まで行ったっけなあ。」
 「タエは嫌がって私の頭の団子をを引っ張って泣くし、タエを泣かすなと
  お父さんは怒るし、本当に大変だったわ。小さかったサトを親切に膝の
  上に座らせてくれた人がいて、助かったことを覚えているわ。」
 「あの時と違って、今回は指定席だし、エアコンも効いてたしね。時間が
  長いのには参ったな。」

posted by たかママ at 23:43 | Comment(0) | 日記
2011年02月08日

うなぎ弁当

 「あ〜あ、うなぎ弁当が食べられると思ったのに、がっかりだなぁ〜。」

夕食の時間をとっくに過ぎたが、Kとタエが帰って来る気配はなかった。
サトと二人、有り合わせの物で簡単に食事を済ませた。大好物のうなぎ
弁当を楽しみにしていたサトは、しきりに残念がった。 

 21時を廻った頃、Kから再び電話が入った。

 「連絡、遅くなって悪かったな。やっと動き出して、京都に着くのは
  22時を過ぎると思うよ。あ、それから、うなぎ弁当な、あれ、夕飯の
  代わりにタエと二人で食べちゃったよ。すまんすまん。」

Kによると、昼食を取らずに新幹線に乗り、昼はサンドイッチでも買って
食べるつもりでいたらしい。それが、突然の新幹線の停車で4人分買って
おいた弁当を昼に2食は食べてしまい、残りの2食を私とサトにお土産に
するはずだった。予想外に時間がかかってしまい、夕食代わりに食べて
しまったのだそうだ。サトが、ますます、がっかりしたのは言うまでも
ない。

posted by たかママ at 23:35 | Comment(0) | 日記
2011年02月07日

新幹線

 旅行も予定通り日程を終えて、帰りの新幹線に乗ったと連絡があった。

 「途中、浜名湖のうなぎ弁当を買って帰るから、夕食の用意はしなくて
  いいよ。」
 「サト、お父さんが夕食にうなぎ弁当を買ってくるそうよ。お母さんも
  夕食の支度をしなくて良いし、久しぶりに楽させて貰うわ。」

 サトと二人、後は帰って来るのを待つだけと安心していた矢先、Kから
再度、電話が入った。

 「さっき関東地方に地震があって、線路の点検のため、新幹線が止まって
  しまったんだ。しばらくかかりそうなんだよ。予定より遅くなるかも
  しれないよ。」
 「それで、タエはどうしているの?大丈夫なの?」
 「新幹線が止まって不安そうだったけど、安全点検の為、止まっていると
  分かって、今は、落ち着いているよ。大丈夫だから、心配しなくていいよ。
  また、連絡するから。」

posted by たかママ at 22:13 | Comment(0) | 日記
2011年02月02日

二人

 よっぽど楽しかったのか、サトの話は尽きなかった。

 「まあ、こんなふうにゆっくり気の合った親友と旅行するなんて、当分
  ないだろうし、楽しくって良かったよな。後は、大学進学に向けて
  頑張るんだな。」
 「うん、分かっている。少しでも良い大学に入れるように頑張るよ。」

 4、5日後、今度はKとタエが出掛けて行った。タエは出掛けに父親と
二人きりで出掛ける不安に、まだグズグズ言っていた。

 「お母さん、やっぱり一緒に行かへんの?」
 「チケットが取れないから、お父さんと二人で行ってきてって言った
  でしょう。」
 「でも、私、お母さんと二人が良い。」
 「お母さん、お仕事忙しいから、行けないの。タエ、ディズニーランドに
  行きたがっていたでしょう? きっと楽しいわよ。帰ってきたら、お母さん
  にお話聞かせてね。」

 タエが父親と二人で旅行したのは、後にも先にもこの時一度きりである。

posted by たかママ at 23:12 | Comment(0) | 日記
2011年02月01日

キャッチボール

 「それで、東京ドームへは入れたのか?」
 「ううん。それがダメだったんだ。行くには行ったんだけど、満席で
  チケットが買えなくて 入れなかったんだ。しゃあないから、ぐるっと
  周りを見学したり、あちこっち見てまわったんや。」
 「それで、団地には行って来たの?」
 「うん、行った行った。偶然、タケシやよっちゃんにもあったよ。皆
  変わってなかったよ。なつかしくて、子供時代に返ってキャッチボール
  をして遊んできたんだ。」
 「だって、T君も一緒だったんでしょう? ほっといて、キャッチボール
  していたの?」
 「違うよ。Tも一緒になって、三角ベースみたいなことをしてさ、初めて
  会ったとは思えないくらいで楽しかったよ。」
 「T君は野球うまいもんねえ。」
 「そりゃ、Tは俺と違って野球部でもレギュラーだったし、久しぶりに身体
  動かして、あいつも嬉しそうだったよ。」
 「なんや、お兄ちゃん、東京で野球して来たん?」

posted by たかママ at 23:45 | Comment(0) | 日記
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。