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2011年01月27日

おのぼりさん

 3日後、よっぽど楽しかったのか、サトがT君との旅行を終え、
満面の笑みを浮かべて帰って来た。夕食時の話題はサトの初めての
東京見物のことだった。
 
 「俺ら、スッゲーびっくりしてしもうたんや。東京の女は美人
  ばっかりやったわ!」
 「そりゃ、京都にも美人はたくさんいるだろうさ? 東京の女性が
  全て美人とは限らないさ。」
 「ちゃう、ちゃう、ほんまやでお父さん。渋谷のスクランブル交差点で、
  見た女の子はめちゃくちゃ、綺麗で可愛かったよ。Tも俺も見とれて
  しまって、交差点の中でウロウロして、危なく赤信号になる所やった。」
 「高校生の男の子が2人でスクランブル交差点の中で、キョロキョロしてた
  なんて、絵にもならないわねえ。」
 「ほんとだ、まったくのおのぼりさんだな。」
 「おのぼりさんて何んやの? お母さん。」
 「それは、田舎から初めて都会に出てきた人が、右も左も分からなくて
  都会の賑やかさに驚いて右往左往していることをいうの。」
 「なんや、俺らはつまり田舎もんやちゅうことやねんな。」 

posted by たかママ at 23:09 | Comment(0) | 日記
2011年01月26日

鉄砲玉

 「ホテルに着いたら電話をするのよ。T君にもお家に連絡するように
  言うのよ。」

私は、出掛けるサトに玄関先で言った。サトは“分かってる、分かってる”
と言わんばかりに、大きくうなずいて出掛けていった。
 今なら、誰もが携帯電話をもっているので、旅先の様子も逐一知る
ことが出来るが、その頃は連絡がない限り、様子が分からなかった。
 サトは出たら、鉄砲玉で帰って来るまで、一度も連絡がなかった。

 「サトから、何か連絡あったか?」
 「ううん、何も。きっと電話をする時間が惜しいくらいに、動き回って
  いるんだわ。」
 「親の気も知らないで、のん気な奴だなあ。ドームには入れたのかなあ?」
 「さあ、どうかしら? いずれにしても、帰ってきたら分かることよ。」

サトが帰ってきて、意気揚々と東京での事を話すだろうと想像して待って
いた。

posted by たかママ at 21:47 | Comment(0) | 日記
2011年01月25日

東京

 夏休みに入って、まもなくサトはT君と一緒に2泊3日の予定で
いそいそと東京へ出掛けて行った。
 宿泊先のビジネスホテルは決まっているものの、行き当たりばったりの
旅行にするという。
  
 「東京ドームはなかなかチケットが取れないらしいわよ。取れなかったら
  どうするの?」
 「当日、行ってみてダメだったら、ドームの周りでも見学してくるよ。
  広い東京だもの。Tに案内する所はいくらでもあるから、心配要らないよ。」
 「そうだね、久しぶりの東京だもの。ゆっくり楽しんで来たらいいわ。
  帰ってきたら、本格的な受験勉強が始まるんだから。ゆっくり出来る
  のも今のうちよ。」
 「でも、お兄ちゃん、小さい時に住んでいただけやのに、東京のこと
  分かるん?」
 「大丈夫、大丈夫。ちゃんと覚えてるし、大丈夫やて。」

Kとタエは、サトが戻って来た後、入れ違いに出掛けることになっていた。

posted by たかママ at 22:01 | Comment(0) | 日記
2011年01月24日

二人分

 ジャイアンツの新しい本拠地として、少し前に出来たBIG BEG
(ビッグエッグ)と呼ばれる東京ドームに、Kは一度は行ってみたいと
言っていた私が予約したチケットをサトが要らなくなったとなると、
渡りに舟とばかりに、三人で行こうと言い出した。二人分の予約しか
してないので、一人分の追加予約を旅行社に依頼したが、満席とのこと
であった。

 「追加は無理みたい。ジャイアンツ戦とディズニーランドのセットじゃ
  人気があるのね。すでに予約で一杯なんだって。私はいいから、タエと
  二人で行ってきたら?」
 「そうかぁ。それはそうだろうな。三人で一緒に行けたらよかったのに
  なあ。タエ、どうだ? お父さんと一緒にディズニーランドとジャイ
  アンツ戦を見に行かないか?」
 「ええっ? お父さんと二人で? お母さんは?」
 「そうだよ。お父さんと二人では嫌か?」
 「チケットが二人分しか取れなかったの。それに、お母さん、仕事が忙しい
  から 休めそうもないし、お父さんと一緒に行ってきたら?」
 「うん、じゃあ、いいよ。」

posted by たかママ at 22:19 | Comment(0) | 日記
2011年01月20日

準備

 サトがT君に電話をした。
 「お母さん、やっぱりダメだよ。Tのお父さんが八重洲口にある
  ビジネスホテルに二人分の予約をしたんだって。八重洲口って
  東京駅のことだよね。」
 「「そうだけど、どうして八重洲なの?」
 「Tのお父さんが出張の時によく使っているんだって。交通の便が
  いいし、東京ドームも近いって言ってた。」
 「野球観戦のチケットはどうするの?」
 「直接、ドームで当日売りを買おうと、Tと話しているんだ。」  
 「そうなんだ。もう、T君のお父さんが準備してくれたのだったら、
  仕方ないわね。お母さんが頼んだ方はドームの指定席が付いている
  のにもったいないわね。もうお金も払ってしまったし、どうしよう
  かしら? やめたら、キャンセル料とられるだろうし、困ったわねえ。」

 「キャンセルすることないよ。せっかくだから、もう一人分追加して、
  タエも一緒に3人で、俺達も行って来ようよ。」

傍らで私とサトの話を聞いていたKが言った。 

posted by たかママ at 21:41 | Comment(0) | 日記
2011年01月19日

計画

 T君とサトの東京旅行の計画は、東京ドームでプロ野球ジャイ
アンツ戦を見て、これまた、開園したばかりの東京ディズニーランド
で遊ぶという。
 この計画が持ち上がって、まもなく、“新幹線で行く東京ドームで
ジャイアンツ戦観戦と東京ディズニーランド“のセット旅行の募集が
旅行社の折り込み広告が入った。

 “なんとタイミングの良いこと、これだ!”
私はサトに聞くまでもなく、早速、T君と二人分の旅行の申し込みを
した。サトもさぞかし喜ぶだろうと思って、このことを話した。

 「ええっ! 申し込んだの? 」
 「そうよ、だって、東京ドームの指定席の観戦チケットも付いている
  のよ。それに新幹線で行くんだよ。お母さん、良いと思って申し込ん
  だんだけど? いけなかった?」
 「Tのお父さんが手配してくれると言っていたから、どうなったか、
  電話して聞いてみるよ。」

posted by たかママ at 23:14 | Comment(0) | 日記
2011年01月18日

お願い

 進学する方向性は決まったものの、真剣に取り組むまでには至ら
なかった。のんびり出来るのも1年生の間だけとばかり、夏休みに
親友T君と東京へ行くと言い出した。

 「お母さん、夏休みに入ったらT君と一緒に東京に行ってきたいんだ。
  2学期から学校でも本格的に大学進学に向けてカリキュラムが組ま
  れるらしいんや。ゆっくり出来るのはこの夏休みまでだと思うし、
  お母さん、お願いやから、行ってきてもいいでしょう?」
 「それは、いいけど。T君はもちろん進学するんでしょう? 勉強も
  よく出来るし、U類だもの。当然よね。 それで、家族の人は東京へ
  行くのをOKしてるの?」
 「うん、あいつから言い出したんだ。お父さんが言ってくれはったんやて。
  2年生になったら、遊んでいる余裕はないから、今のうちに行ってこいっ
  てさ。東京へ行ったら、僕が住んでいた団地や小学校にも連れて行く
  つもりさ。あ、それから出来たばかりの東京ドームにも行きたいんだ。」

posted by たかママ at 21:27 | Comment(0) | 日記
2011年01月17日

一変

 この頃の私は、友禅の収入があるということで、毎月の生活費の
3割くらいを負担していた。これ以上の負担となると、ますます、
やりくりが厳しくなるのは分かりきっていた。だからと言って、
サトに進学を止めるようにとは、とても言えなかった。
 それに、私学にお金が掛かるなら、国公立にしたら良いとか、
止めさせたらいいとか単純なことではない。Kの認識の甘さに呆れて
しまった。

 サトはとにかく大学進学という目標に向かって走り出した。授業が
終わると、まっすぐ家に帰り、机に向かう日々が続いた。

 こんなサトの懸命さに答えようと、私の生活は一変した。受験の
費用と、せめて1年分の授業料貯めようと、私も友禅の仕事を増やし、
内職の職人を募集することにした。
 
posted by たかママ at 23:05 | Comment(0) | 日記
2011年01月13日

費用

 Kがサトの進学に賛成したことで、私はそれに伴うもろもろの
費用を捻出しなければならなくなった。Kはただ受験をすることを
承知しただけで、何もかも自然に運ぶ物と思っていた。

 「これから受験までの間に、せめて1年分の学費は貯めなくては・・・。
  私学だったら、年間120万〜130万円位は要るらしいわよ。
  それに、受験料もいるし。」
 「それは、お前が準備するんだろう?」
 「ええっ? 私が?」
 「そりゃ、そうだろう。それが出来るから、サトの受験に賛成したん
  じゃないのか? 私学にしないで、国公立にすれば良いじゃないか?
  それなら、費用があんまり掛からないだろう? お金のことでとやかく
  言うなら、進学は止めさせれば良いじゃないか。大学進学はサトの
  希望と言うより、むしろ、お前の願望じゃないのか?」

posted by たかママ at 23:12 | Comment(0) | 日記
2011年01月12日

財産

 さすがのKも、熱心に説得するサトに反対することが出来なかった。
 
 「サトの気持ちはよく分かったが、家には予備校に通わせる余裕は
  ないんだ。自分の力だけで受験する覚悟があるなら、反対しないよ。」
 「お母さんは、大学に行くのは大賛成よ。やると決めたら、一生懸命
  勉強して、必ず大学に入って、たくさんの友達を作るのね。人間に
  とって、友達に勝る財産はないと思うわよ。」

 父親の言葉に、サトの顔が一瞬明るくなったように気がした。しかし、
今まで何の手立てもしてこなかったサトが、これから、自力で大学受験の
準備をするのは、並大抵のことではないのは、火を見るより明らかであった。

 Kが特別に進学に必要な経費を出さないと明言しているので、家計費の
中から、私が教材を買ってやるくらいしかなかった。
受験勉強の手段も皆目検討がつかない。サトと相談の上、まず手始めに
学研の進学用の教材を毎月購入することにした。

posted by たかママ at 22:39 | Comment(0) | 日記
2011年01月11日

知らない世界

 その日の夕食後、サトは神妙な面持ちで父親に切り出した。
  
 「お父さん、僕、ちょっと話があるんやけど。」
 「おうっ、なんだ? めずらしいな。」
 「お母さんから聞いてると思うんやけど、僕、大学へ行きたいん
  やけど。」
 「うん、そうらしいな。でも、高校に入ったばかりだろう? 
  もう、大学進学の話か?」
 「僕は、高校に入ってから、進学したいと思ったんやけど、他の人は
  中学校の時から塾に行ったりして、準備してはるんや。」
 「何も無理して、大学に行かなくても、生きていけるるだろう?」
 「それはそうだけど、高校卒業やとそのレベルで、大学に行ったら、
  大学に行ったレベルの人達と付き合って生活していけると思うんや。
  高卒がダメとは思わないけど、大学は全国からいろいろな人が集まって
  来て、その付き合いの範囲も広いと思うんや。僕は、僕の知らない世界
  の人たちと付き合ってみたいんだ。」

posted by たかママ at 22:05 | Comment(0) | 日記

新年のご挨拶&休業日の変更のお知らせ

謹んで新春のお慶びを申し上げます。
本年も皆様にとって輝かしい年となりますよう
心からお祈り申し上げます。


皆様、お正月はいかがお過ごしでしょうか。
いつも『私と沖縄』を読んで頂き、ありがとうございます。

今日からブログ再開!!^^
今年も焦らずに、のんびりとマイペースでいきたいと思います。

毎週金曜、土曜、月曜日を休業日としていましたが、
今月から休業日を変更いたします。

毎週金曜、土曜、日曜日を休業日となります。

どうぞ、よろしくお願いいたします。ペコリm(_ _)m

                            たかママ

posted by たかママ at 22:00 | Comment(1) | お知らせ
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