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2010年11月28日

啖呵

 「それで、サト、どうだ。入試は大丈夫そうか?」
 「大丈夫だと思う。たぶん・・・。」
 「たぶんでは困るわよ。先生にあれだけ公立一本でいきますって、
  啖呵切ったんだから、頑張って合格しなくちゃね。」
 「まあ、試験は時の運もあるんだ。そうプレッシャー掛けるな。先の
  ことは結果が出てからでも遅くないさ。」

 翌日、京都に越してきて以来の友人、Mさんから電話が入った。Mさん
の長女はサトと小学校の同級生で、話題はやはり子供達の入試だった。

 「滑り止めに私立を受けたらどうかって、言われたわ。」
 「うちも言われたわ。でも、併願は難しいで。私立の方も専願で受ける
  人を優先するやろうしな。」
 「そうねえ。もし、公立に受かったら、自分の所に入学してくれるかどうか
  分からない人より、確実に入学してくれる人を優先するわよね。」
 「有名私立高校を受けるくらいの学力があったら言うことないねんけど。
  うちも、何が何でも、公立に受かってもらわなければと思うてるんやわ。」

posted by たかママ at 22:56 | Comment(0) | 日記
2010年11月25日

意志

 「どう逆立ちしても、公立は無理だと言う事ではないのですね?」
 「今の状況では、とにかく当日の試験で頑張って貰うしかないとしか
  言えません。万が一を考えて、私立を併願してはどうかなと思った
  ものですから。」
 「先生のお話はよく分かりました。いろいろ、ご心配頂いて、申し訳
  ないのですが、私共ではやはり公立一本でいきたいと思います。」
 「仮に、公立がダメだった場合はどうなさいますか?」
 「それはその時に考えます。専門学校に行くなり、父親が自営ですから、
  その手伝いをしても良いし、まずは入試の結果が出てから、相談したい
  と思います。」

担任は、私達の意志が固いので、私立高校受験を勧めることを諦めたようだ。
 夕食後、今度は親子三人、面談の結果を話し合った。

 「何で、先生はあんなに私立を勧めるのかしらねえ。私立に勧めると、
  リベートでも入るのかしらと思っちゃった。」
 「それはないだろうよ。とにかく安全パイが欲しいんだろう。」
 「それはね、学校にも合格率とかあって、他の学校に負けたくないん
  やって。皆言ってるで。何が何でも、どこかに合格して欲しいんやて。」

posted by たかママ at 22:56 | Comment(0) | 日記
2010年11月24日

安心感

 受験が間近になってくると、周りの仲間がピリピリしている状況では、
のん気なサトものんびり構えてはいられないらしい。冬休み、クリスマス、
正月と浮かれている訳にはいかない。受験校を決めなくてはいけない
時期は、すぐにやって来た。
 
 最後の三者面談で話し合いが行われたが、私達の公立高校を受験する
意志は変わらなかった。
 しかし担任は、またもや、滑り止めの私立高校に受験することを強く
勧めた。

 「やはり、滑り止めの私立を受けた方が良いと思うんですよ。」
 「サトの成績では、公立はどうしても無理だということですか?」
 「いや、前回の三者面談の時に比べると、かなり良くなっているとは
  思います。しかし、偏差値の点から見ればぎりぎりってとこですかねえ。
  後は、当日の試験の結果次第ですから、不安が残るんです。私立を先に
  受けておいて、公立の試験に臨む方が安心感というか、気持ちを楽に
  できると思うんですよ。」

 安心感を買う為に、私立を受験するように勧めるなんて、私は腑に落ち
なかった。

posted by たかママ at 22:55 | Comment(0) | 日記
2010年11月23日

鬼に金棒

 「お母さんが前に言っていたやろ。教科書のどのページに何が書いて
  あるかが分るほど、覚えられたら鬼に金棒だって。」
 「鬼に金棒って、そんなことを言ったことがあったかしら? でも、
  そんなになるほど、読むなんてすごいよ、お母さん、感心しちゃった。
  K君の質問に、教科書見ないで答えていたでしょう?」
 「うん。でも、そんなこと大したことないよ。全部、分っているつもりでも
  間違えたら、Kに悪いから、確認したけど間違えてなくて良かったよ。」
 「K君は、秀才で有名じゃない? どうして、サトに聞いてくるの?」
 「そうだよ、Kは学年でも1、2番だよ。つまり、成績優秀者ってやつさ。
  でも、あいつの一番の苦手科目が社会科なんや。唯一、僕があいつに
  勝てる科目が社会ってわけ。」
 「ヘェ〜。でも、一つでもK君に勝てるものがあって良かったねぇ。ふふふ。」
 「まあね。あいつ、それだけで僕のこと尊敬しているって、言うんや。変な奴
  だよ。自分の方が秀才って言われるほど勉強できるのにさ。」

サトはまんざらでもなさそうに、また、机に向かった。この光景は、受験まで
の間、何度も目にするようになった。

posted by たかママ at 22:42 | Comment(0) | 日記
2010年11月22日

 サトの開いた世界史の教科書を見て、私は驚いてしまった。なんと、
使い古した辞書のように、教科書の角が全部めくれ上がって丸まって
いたのである。

 それは、私が高校生の時に使っていた3人もの人が使って廻ってきた、
お古の英語の辞書と同じだった。学生の時に、私はかなり値の張る辞書
の類は、全てお古であった。親戚や知人から廻って来た、縁がめくれ
上がった辞書を見ては、私はいつも思ったものだった。
 
 “たまには、ま新しい辞書が欲しいなぁ。”と。

私は、電話を終えたサトに聞いた。
 
 「それ、世界史の教科書?」
 「そうだよ。それがどうしたの?」
 「うん、お母さん、驚いてしまった。教科書、縁がずいぶん捲れあって
  いるじゃない? ずいぶん、何度も何度も読んだみたいね。」
 「そうやねぇ。僕が一番自信のある科目だからね。」

posted by たかママ at 20:33 | Comment(0) | 日記
2010年11月18日

自認

 父親には、高校受験は軽く大丈夫と返事をしていたサトは、翌日から人が
変わったように勉強を始めた。サトの最も得意とする学科は社会である。特に、
世界史は大好きだと自認していた。確かに、他の科目に比べれば、はるかに
成績は良い方だ。
 のん気者のサトでも勉強に精出しているということは、同級生も頑張っている
のは当然だろう。そんなある日、親友のKくんから電話が掛かってきた。どうも、
世界史について、何か聞かれたようだ。

 「それなら、教科書の△△ページの×行目から○行目にかけて出ているよ。
  ちょっと待って。教科書取ってくるから。」

受話器を置いたサトは、慌てて2階へ駆け上がり、教科書を一冊持って降りて
きた。その教科書をめくりながら、サトは再度、受話器に向かった。
 
 「な、書いてあるやろ? その辺の所を重点的にやってたらええんちゃうかな。」

サトは教科書も開かずに、K君の質問に答えていたらしい。

posted by たかママ at 22:02 | Comment(0) | 日記
2010年11月17日

自由

 ドキドキしていたサトは緊張していたのか、顔を強張らせながら、神妙な
面持ちで父親の前にひざまずいた。

 「これからどうしたいのか、考えてみただろうな? 高校はどうするんだ、
  受験するつもりか?」
 「ウン、受験する。」
 「別に行きたくないのに、周りの友達が行くから自分も受験すると言うん
  じゃ、話にならないぞ。昼間も言ったように勉強が嫌いだったら、身体を
  使って生きていってもいいし、頭を使って世の中で生きていきたいのなら、
  まず、高校は出なくてはな。どちらを選ぶかは、サトの自由だ。」
 「とにかく高校は行きたいと思っているよ。その後のことは、高校に入って
  から考えるよ。」
 「そうか。それなら、今までのような生活態度ではだめだろう? これから、
  しっかり勉強しなければ。先生も今のままでは、公立は無理だと言って
  いたそうじゃないか。うちの経済状態では、私立は無理だから、どうしても
  公立を目指してくれなくてはな。受験の日まで、もう少ししかないぞ。それ
  まで頑張れるか?」
 「大丈夫。これから必死で頑張るから。僕がその気になったら、高校受験くらい
  心配要らないから。」

posted by たかママ at 23:02 | Comment(0) | 日記
2010年11月16日

八つ当たり

 Kが階段を下りるや否や、サトは雑然としていた机の上を慌てて
片付け始めた。そんな様子を私は見て見ぬ振りをしていた。

 「お母さんが言いつけたんやろ!」

サトは、私を睨み付けて言った。

 「別に言いつけたりしてないわよ。お父さんに様子を聞かれたから、
  本当のことを話しただけよ。お母さんに八つ当たりしないで!
  でも、最近のサトの生活態度は、お父さんに言われて当然の様子
  だったんじゃないの?」

 サトは反論することもなく、黙って机に向かい教科書を開いた。
しかし、机に向かっているものの、妙に落ち着きが無かった。
 帰ってから話し合おうと言っていたKが、この日はなかなか帰って
こなかった。玄関先で物音がする度に、サトは緊張した面持ちで音の
する方に視線を泳がせていた。

posted by たかママ at 23:06 | Comment(0) | 日記
2010年11月13日

考え

 例え、のんきなサトでも、父親の言わんとしていることの意味は分かった
と見える。

 「うん・・・。」
 「お母さんに聞いたんだけど、クラブを引退してから、大分経つけど、
  全然勉強してないらしいな。高校はどうするつもりなんだ?」
 「行く・・・。」
 「行きたくなかったら、無理して行かなくてもいいんだよ。お父さんの
  ように、頭を使わず、肉体労働をして生きるんだったら、それもいいさ。
  中学を卒業したら、運転免許を取って、お父さんと一緒に廃品回収でも
  するか?」
 「それは嫌だ。僕、高校は行きたいよ。」
 「高校へ行きたいんだったら、漫画なんか読んでのんびりしている場合じゃ
  ないだろう? とにかく、サトがこれからどうしたいのか、よく考えて
  みるんだな。今晩、お父さんが帰ってから話し合おう。その時、改めて
  サトの考えを聞くから、それまで考えをまとめておくんだな。」

Kはそう言い残して、仕事に戻って行った。

posted by たかママ at 11:08 | Comment(0) | 日記
2010年11月11日

仁王立ち

 毎晩のように、Kはサトの様子を聞いてくる。その度に、私は決まった
ようにこう答える。
  
  「うん、相変わらず。」

 そんなある日、朝、いつものように出掛けて行ったKが、11時頃に突然
連絡もなしに戻って来た。いつもは、廃品回収のマイクの音が聞こえるので、
近くへ来ているのが分かったが、その音も全く聞こえなかった。それも、
忍び足で2階へ上がってきたのである。人の気配に驚き、振り返った私に、
Kは人差し指を口に当て、小さく

 「シーッ。」

と言った。
 そして、そっと私の仕事をしている部屋に入ってきた。それから、隣のサト
の部屋の襖を思い切り開けた。いつものように、ベッドで漫画を読みふけって
いたサトは、突然、現れた父親の姿に腰を抜かさんばかりに驚き、慌てふた
めき、顔色を変えた。
 ベッドから降りて神妙に座っているサトに、仁王立ちのまま、Kは言った。

 「お前、今がどんな時期か知っているな。」

posted by たかママ at 22:59 | Comment(0) | 日記
2010年11月10日

のんき

 今まで、宿題やテストの勉強などするように、厳しいことは一切
言ってこなかった私だが、さすがに、このサトの怠惰な毎日にイライラ
が募ってきた。

 “このままでは、サトは高校に入れないのではないか?”

 「最近、サトはどうしている? 部活もなくなったし受験勉強に本腰を
  入れるだろうな? せめて、高校くらいは行かせなくてはなあ。」
 「それがねえ、サトには本当に困ったものだわ。夏休みに入ってから、
  一日中、ずうっとベッドにひっくり返って、漫画ばかり読んでいるわ。
  大事な時期なのに、少しも緊張感がないみたい。」
 「のんきなやつだなあ。」
 「今まで、勉強、勉強とうるさく言ってこなかったから、いけなかった
  かしらねえ。そろそろ、爆弾を落とそうかと思っているんだけど。」
 「もう、2、3日、様子を見てみよう。それでも、動きが見られなかったら、
  俺が何とかするよ。」

posted by たかママ at 22:56 | Comment(0) | 日記
2010年11月09日

夏休み

 夏休みに入って、サトの野球部は夏の大会で見事(?)に初戦敗退、
3年生は引退した。
 これで、いよいよ、受験勉強の正念場になるはずだった。しかし、サトは
先に控えた受験を気にしている様子はなく、のん気に過ごしていた。
  
 毎朝、父親が仕事に出掛けた後にやおら起き出し、朝刊に目を通しながら、
用意してある、遅い朝食を摂る。まるで、その姿は親父そのものである。
その後は、2階の自分の部屋のベッドに横たわり、漫画を読んで。日がな
一日を過ごすのである。隣の部屋で反物に向かっている私を意に介する様子も
ない。

 “部活が終わって、ホッとしているんだろう。そのうち、受験勉強に
  精出すようになるだろう。“

と、私もしばらくは大目に見てやろうと思っていた。
 
 しかし、サトは一向に勉強に本腰を入れる様子が見えない。相変わらず、
漫画本を読みふけり、飽きるとTVゲームに興じる有様だった。

posted by たかママ at 22:49 | Comment(0) | 日記
2010年11月07日

1学期

 最後に、担任は言った。
 「今のような成績では、公立一本では難しいかも知れませんねえ。
  滑り止めに、どこか私立を受けることも考えられたら、いかがですか?」

その日の夕食後、Kに面談のことを報告をした。
  
 「今のサトの成績では、公立は難しいらしいわ。先生は滑り止めに私立も
  受験したらって言っていたわ。」
 「受験は、まだまだ先の話だろう? 公立は無理だと決め付けるのは
  どうかなあ。」
 「そうなのよね。1学期の間は野球もあるし、夏休みの試合が終わらな
  ければ、勉強にも身が入らないかもしれないわね。」
 「サト、部活はいつまで参加するんだ?」
 「夏休みに入ってすぐに試合があって、その試合に負けたら、3年生は引退
  するんだ。僕は、レギュラーじゃないから、別にどうでもいいけど、練習
  には出なくてはいけないんだ。やっぱ、夏休みに入ったらクラブ活動は
  終わりかな。」
 「勝負は夏休みに入ってからってとこね。それから、頑張るしかないわね。」

posted by たかママ at 22:51 | Comment(0) | 日記
2010年11月04日

三者面談

 三者面談は具体的な話はあまりなく、3年生になって、自分の進路に
ついて、どう思っているのか、親は子供の進路をどのように考えているのか
確認し合う場であった。
 高校はどのような仕組みになっているのかとか、受験する時の偏差値は
どのように設定してあるのか。偏差値も学校によってレベルが違うとか、
説明を受けた。何もかも初めて聞くことが多くて、理解するの時間がかかっ
たのを思い出す。

 子供の頃から私立に受験することを目標に進学塾に通ったり、家庭教師に
ついて勉強している一部の人を除いて、大多数は公立高校に進学するので
ある。
 大学進学を見据えたU類、普通科T類、スポーツ科などのV類。担任の
話によると、公立高校もいろいろな選択肢があるという。高校を受験する
段階でその上の進路まで、念頭に入れて高校を受験しなければならないと
いう。

 高校もまだ受験してないのに、大学や専門学校など、その上の進路まで
考えたり想像したことがなかったので、戸惑ってしまった。

posted by たかママ at 22:36 | Comment(0) | 日記
2010年11月03日

事前会議

 京都へ戻って、また相変わらずの忙しさに、アッという間に時間だけは
お構いなしに過ぎていく。
 年は変わり、サトは中学3年生に、タエが小学校4年生になった。サトに
とっては、いよいよ高校受験の正念場を迎える。

 新学期そうそう、進路について三者面談の連絡があった。その前にサトの
気持ちを確かめることにした。親子三人の事前会議である。

 「明日、進路について、三者面談があるってお母さんに聞いたけど、サトは
  どう思っているんだ?」
 「高校? それは行くに決まっているよ。」
 「行くって言ったって、受験して受からなくてはいけないんだよ。そろそろ、
  どこの高校を受験するのか、決めておかなくてはいけないのだろうし、
  そのための面談だろう?」
 「前は、J高校を受けるって言っていたけど、今も変わってないの?」
 「うん。でも、まだはっきりとは決めてない。」
 「そうねえ。決めてあっても受験できるだけの学力があるかどうかも、問題
  よねえ。野球ばかりやっていて、成績あまり良くないし、お母さん心配だわ。」
 「いくらなんでも、公立高校は大丈夫だろう? な、サト。」

posted by たかママ at 22:51 | Comment(0) | 日記
2010年11月01日

天狗

 ミナがリビングで私を手招きした。
 
 「自分が仕切りたいんだから、シズのことなんか放っておいたら?
  知ったかぶりして、人の意見なんか、どうせ耳に入らないんだから。
  言うだけ無駄よ。」
 「それは分かっているけど、黙ってられなくてさ。」
 「仲人がどんなに偉いのかしらないけど、天狗になっているんじゃないの?」
 「ずいぶん偉そうだよね。大役を果たして、きっと勘違いしてるんでしょう。」
 「でも、気まずくなるから、あんまり、口挟まないほうが良いよ。泊まって
  行くんでしょう?それとも、狭いけど、私の所で泊まる?」
 「あり難いけど、ミナの所は駅まで遠くて不便だもの。新幹線の都合もある
  から、ここに泊まるわ。」
 「そう? それより、私、もう帰るわ、義兄さんやサト、タエにもヨロシクね。
  そのうち、京都にも遊びに行くわ。じゃあね。何かあったら、電話して。」

ミナは言いたいことを言うだけ言って、帰って行った。

 翌日、母はシズと一緒に先方のお母さんと会い、結婚式の費用の精算する
ことになっていた。

posted by たかママ at 23:00 | Comment(0) | 日記
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