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2010年03月31日

喪服

 私達はN家の近く前で来て、弔問客の着ている服を見て驚いてしまった。
弔問客の殆どが喪服を着ていたのだ。 
東京では、お通夜の席に喪服を着て行くのは失礼に当たると、諸先輩から
教わっていた。取るものも取り合えず、駆けつけましたということで、地味で
目立たない服装でお通夜の弔問には伺ったものだった。喪服で行くのは故人の
死を待っていたかのように思われ、家族の気持ちを傷つけかねない。喪服は
葬儀の時にや、法事の時に着用するものだと言われていた。
 私達は、今までの経験で、普段着のちょっと改まった程度の服装で出かけて
いた。

 「お父さん、皆、喪服を着ているわよ。私達も喪服に着替えて、出直して
  来ようよ。」
 「そうだな、驚いたなあ、皆、喪服だもんな。」
 「ほんと、驚いちゃった。東京では、お通夜は普段着でというのが当たり前
  なのにね。」
 「地方によって、習慣が違うから仕方ないよ。」

 京都へ来て以来、一度も着用したことのなかった喪服を引っ張り出した。
慌てていたので、弔問用の黒いネクタイが見つからない。ミニバイクを飛ばして
洋品店を何軒か回って買い求めて、大そぎで改めて弔問に行った。
 時代は変わって、最近は東京でも、お通夜の喪服着用が増えていると聞いた。

posted by たかママ at 22:10 | Comment(0) | 日記
2010年03月30日

付き合い

 昼食に帰って来たKが、借家の時の隣家のお婆さんが亡くなったらしいと
言った。
    
 「N自動車のお婆さんが亡くなったようだよ。今、前を通りかかったら、
  葬儀屋さんが来ていてお通夜の準備をしていたよ。」
 「そう? この前、見かけた時はお元気そうだったのに。優しい、物静かな
  お婆さんだったのに、分からないものねえ。」
 「奥さんが、俺達に住んでいた家を掃除していたよ。そこで、お客さんの
  控える場所にするんだろうなあ。」
 「最近、その近くを通ったことが無かったので、知らなかったけど、私達が
  住んでいた家、まだ借り手が付いてなかったのね。私達もお線香を上げに
  行かなくてはいけないわね。」
 「そうだな。少なくても5年間はお隣さんとして付き合いがあった訳だから、
  行くのが常識だろう。夕方、早めに帰って来るよ。」

 夕方、Kが帰るのを待って、夕食もそこそこに二人で出かけた。歩いても
5、6分の距離である。夕闇が迫っていて、辺りはうす暗かったが、竹薮の
前のその家は、直ぐそれと分かるように 明かりがともっていた。

posted by たかママ at 21:58 | Comment(0) | 日記
2010年03月28日

信用金庫

 サトの思いがけない猛烈な反対に、Kは家を買い換えることを諦めたようだ。
以後、その話題は口にしなくなった。
 一方、信用金庫が持ち掛けて来ていた住宅ローンの組み替えの試算表が
出来上がってきた。
 日本ハウジングとほぼ同じ条件での試算の結果月々の支払いで、約3000円
ほどの減額になっていた。

 「この位の差額では、ローンを組み替えるメリットは無いと思うけど?」
 「そうねえ。ローンを組み替えると言う事は、また、新たに書類を全部揃え
  なくてはいけないのよね。印紙代とかその費用も掛かるし、面倒だし
  大変だわ。」
 「ただ、貸し手がハウジングローンと言うローン会社から、信用金庫に変わる
  だけで、また、手続きやら何やら、煩わしいだけだよ。」
 「世間的には市中のローン会社より、信用金庫の住宅ローン方が聞こえが
  良いのかもしれないけどね。」
 「他人に“うちは、何処そこの銀行ローンで家を買いました。”なんて触れ回る
  訳でもないから、関係ないさ。それに、俺達が銀行や信販会社で相手に
  されなかった時、唯一ローンを組んでくれた所だし、裏切るわけには
  いかないよ。」
 「そうねえ、信金の営業さんにも試算をする事で、顔も立てたし、明日に
  でも正式に断っておくわ。」

posted by たかママ at 23:26 | Comment(0) | 日記
2010年03月25日

 普段、親に口答え一つした事のないサトが厳しい口調で反対した。挙句の
果てに、“お父さんが一人で行けば”と言い放ったのである。Kは驚き、次の
言葉が見付からなかった。サトは言うだけ言った後、不機嫌そうに階段を踏み
鳴らしながら上って行き、2階の自分の部屋に引きこもってしまった。
 
 「どうして、嫌なのかなあ。いい話だと思うのに。」
 「やっと馴染んできたのに、今更、新しい所なんて行きたくないのよ。」
 「でも、金銭的には魅力的だよ。そう思わないか?」
 「そうとは言えないんじゃない? だって、仮に3800万円で売れたとして、
  今の家の1200万円を差し引いて、2600万円残るでしょう。2600万円で
  今より大きな家は買えないわよ。」
 「2600万円だよ。1200万円の倍の家は買えるじゃないか。」
 「それはないわよ。だって、1200万円の家が3800万円になったという事は、
  器の大きさは変わらないで、単に値段が上がっただけでしょう? そしたら、
  買える大きさは限られてくると思うのよ。」
 「そうか、2600万円という事は、ローンを組んだ時には800万円位で買える
  家という事なんだよな。」
 「田舎に行けば少しは条件は変わってくるかもしれないけど、結局は今とあまり
  変わらないかもしれないわね。」

posted by たかママ at 21:49 | Comment(0) | 日記
2010年03月24日

大きな家

 Kは夕食後、サトを捕まえて話し出した。

 「サト、もっと大きな家に住みたくないか?」
 「それは住みたいけど、ここに引っ越して来て間もないのに、もっと大きな
  家を買うの?」
 「うん。ちょっと考えているんだけど。今、この家が買った時の3倍位に
  値上がりしているんだ。それで、ここを売ればもう少し大きな家が買える
  と思うんだ。」
 「この近く?」
 「いや、それが相談なんだけど。
  月ヶ瀬とか、お父さんは滋賀県の方はどうかなあと、思っているんだ。」
 「僕は嫌だ! もう引っ越したくない。今の友達と一緒に同じ高校に行くん
  だから。」
 「友達は、また出来るさ。庭でバッティングの練習も出来るぞ。」
 「お母さんの友禅の仕事はどうなるの?
  タエだって、友達が出来て楽しくしているのに、また、新しい所で慣れる
  まで時間が掛かるし、かわいそうやん。」
 「きっと、タエも、もう大丈夫だよ。なあ、サトも考えてみてくれよ。」
 「僕はぜったい嫌! そんなに月ヶ瀬が良いんだったら、お父さん一人で
  行けばいいやん! タエと僕はお母さんと一緒にここに居るから。」

posted by たかママ at 22:11 | Comment(0) | 日記
2010年03月23日

月ヶ瀬

 購入時より価値が上がるのは、悪い気はしないものだ。近所でも、何軒か
の人が買った時より値が上がったというので売って、新しい所へ引っ越して
行った。
 Kはローンの組み換えより、買い替える方に興味があったようだ。
 「今なら、不動産が値上がりしていて、うちの家でも3800万円位で
  売れるらしいよ。」
 「3軒向こうのUさんも月ヶ瀬(滋賀県)の方に引っ越すんですって。」
 「あの辺なら、大分大きな家が買えるだろうな。俺達も考えてみてもいい
  かもな。」
 「ええっ? また引っ越すの? 私は嫌よ。せかっく仕事も慣れてきたし、
  月ヶ瀬なんかに職先が来てくれる筈ないじゃない。」
 「最近、京滋バイパスが開通したから、滋賀県なんかすぐさ。40分もあれば
  充分だよ。」
 「兎に角、それは反対。子供たちも地域に馴染んできたというのに、また、
  新しい環境を強いるなんて出来ないわ。それに、タエの聴こえの訓練は
  どうするのよ。」
 「訓練する機関は京都だけにある訳じゃないだろう? きっと、滋賀県にも
  あるさ。」

 私が反対したのにも関わらず、Kは諦め切れなかったのか、今度はサトを
味方に付け、話を進めようとしていた。

posted by たかママ at 21:58 | Comment(0) | 日記
2010年03月22日

営業マン

 時期はバブル景気の真っ只中、我が家のような零細の業者の所にも、連日
のように地元の金融機関が来た。特に熱心だったのは、駅前に新店舗を構えた
信用金庫の営業マンだった。
 家族全員の普通預金を始めてくれだの、金利を有利にするので住宅ローン
を組み替えてくれだの、こちらが根負けしてしまうほどだった。
 毎日のように、ご機嫌伺いに来る営業マンと顔をあわせているうちに、
何となく親しくなっていた。
 住宅ローンが組めなくて困っていた私達に、ローンを組んでくれた日本ハウ
ジングローン会社に恩を感じていたので、ローンの組み替えにKは乗り気で
なかった。
 組み替えるには、また印鑑証明や申込書など煩雑な手続きが必要になって
くる。その事も、Kには面倒な事だった。
 しかし、再三にわたる営業マンの強い勧めに、Kはローンの組み替えの試算を
しぶしぶ了承した。

 「試算の結果を見て、考える事にするよ。」
 「勿論です。兎に角、金利など安くさせてもらいますので試算だけでも
  させて下さい。」

 当時、1200万円で購入した家が、3800万円位に値上がりしていたの
である。資産価値が上がったので、貸しても採算が取れると踏んだのろう。

posted by たかママ at 23:55 | Comment(0) | 日記
2010年03月18日

電話

 「履歴書、寄こしてあったわね。そこへ電話しても、無駄かしら?」
 「よせ、よせ。他人を騙す奴が電話番号を正直に書く筈がないじゃないか。
  名前も偽名に決まっているさ。」

 Kに止められたものの、みすみす騙されるのも悔しくて、無駄とは知り
ながら、履歴書に書いてあった番号に電話をしてみた。

 “お掛けになった電話番号は、現在使われておりません。”

無常にも、受話器の無効から自動音声が流れてきた。

 「だから、止せって言っただろう? まあ、仕方ないよ。俺も高い授業料
  払ったと思って、これからは気をつけるよ。それはそうと、サトにビデオ
  (デッキ)の事、話したのか?」
 「何も話してないわよ。突然、お父さんが買って来たと言った方が喜ぶだろう
  と思ってたので、それまで、内緒にしとくつもりだったの。」
 「それは良かった。話していたら、詐欺に遭ったから、ビデオデッキは手に
  入らなかったなんて、格好悪くてサトに言えないよ。」
 「本当に高い授業料だったけど、命まで取られた訳じゃないし、それに騙す
  より、騙された方がまだましよ。」
私は、慰めにもならない言葉をKに掛けていた。

posted by たかママ at 23:27 | Comment(0) | 日記
2010年03月17日

完敗

 革ジャンの男が車を降りたきり中々戻って来ないので、イライラしながら
待っていた。駅の乗降客に何となく目をやっているうちに、Kはハッとした。

  もしかして、騙されたのか?

 嫌な予感がして、慌てて、近辺を必死で探し回ったらしい。夕闇で辺りは
薄暗く、駅前のラッシュアワーの混雑に紛れて、男は姿を消したとみえる。

 「それで、警察には届けたの?」
 「俺が、頭から信じて疑わなかったんだから、とても恥ずかしくて、おいそれと、
  騙されましたと警察に被害届けなんて出せないよ。よく考えてみたら、
  話が上手すぎるよな。そのビデオデッキは、奴の兄貴が貸した金のかたに
  取ったもので、自分の所にはあるので、処分に困っている。誰か、買って
  くれる人を探していると言っていたんだ。新品だが、4万円で良いと
  言うしさ。ちょうど、サトが欲しがっているのを思い出して、新品なら
  買っても良いかなと、思ったのが運のつきさ。」
 「そうなんだ。お金は品物と引き換えにと言ったら良かったのにね。簡単に
  他人を信用しちゃいけないってことかしらねぇ。」
 「そうだなあ。兄貴がビデオデッキを借金のかたに取ったと言う話も、
  全部でたらめな作り話だろうな。決して、自分の方から買って下さい
  なんて言わないんだ。こっちに買っても良いと思わせるんだよ。あれは
  プロだな。見事にしてやられたよ。俺の完敗さ。」

posted by たかママ at 22:20 | Comment(0) | 日記
2010年03月16日

後の祭り

 日が暮れて外が真っ暗になっても、Kは帰って来なかった。いつもなら、
こまめに電話連絡をして来るのに、何かあったのかと気を揉んで待っていた。
 20時近くになって、Kがとても疲れたような顔をして、ようやく帰ってきた。
  
 「遅かったわね。大分疲れているみたいだけど、何かあったの?
  ビデオデッキはどうしたの?」

Kが手ぶらで帰って来たのに気が付いた私は、畳み掛けるように聞いた。

 「それが、俺、詐欺にあったみたい。奴にすっかり騙されてしまったよ。」
 「奴って、さっき助手席に乗っていた、革ジャンの人?」
 「そう、墨染めの駅の近くの公団住宅に住んでいる、兄貴の所からビデオ
  デッキを取ってくると言って車を降りて、それきり戻って来なかったんだ。」
 「お金を先に渡しちゃったの?」
 「そうなんだ。塵子の仕事をするといって、履歴書寄こしていただろう。
  すっかり信用して、先にお金を渡してしまってさ、俺も馬鹿だよ。待てど
  暮らせど戻って来ないから、騙されたと気付いた時は後の祭りさ・・・。」

Kは落胆した様子で、自嘲気味に力なく言った。

posted by たかママ at 22:04 | Comment(0) | 日記
2010年03月14日

ビデオデッキ

 秋風が肌に感じるようになった頃の夕方、Kが出先から電話をよこした。
   
 「もうすぐ帰るから、お金を4万円用意しておいてくれ。」
 「4万円も何に使うの?」
 「ビデオが安く手に入るんだよ。」
 「ビデオデッキの事? 4万円は安いわね。」

 ビデオデッキも現在のように普及してなく、出始めの頃20万円程していた
のが7、8万円になっていた時期だ。4万円で手に入るなら、確かに安い
買い物だと、私も思ったものだ。その頃、サトがしきりにビデオデッキを欲し
がっていたので、Kも安く手に入れることが出来るなら、買っても良いと
思ったらしい。
 電話が入ってから、1時間ほどしてKが帰ってきた。トラックの助手席には
見知らぬ男性が乗っていた。革ジャンを着た、恰幅のいいその男性は、私を
見て助手席からペコリと頭を下げた。

 Kはお金の入った封筒と引き換えに、一通の茶封筒を私に寄こした。

 「あいつの履歴書。詳しくは帰ってから話すから、とにかく預かっておいて。
  墨染までビデオを取りに行って来るよ。」

posted by たかママ at 21:57 | Comment(0) | 日記
2010年03月11日

仁義

 かのヤーさんが居る時は、遠巻きに、陰で無責任に噂をしていた人たちが、
今度は、根掘り葉掘り、興味本位に聞いてきた。

 「どないな話し方? やっぱし、乱暴な物言いしてたん?」
 「掃除ばっかし、しとったようやけど、どんな暮らししてはったん?」
 「一人者(もん)やろ? 料理なんか自分でしとったんやろか?」
 「話してても、怖なかったん?」
 「別に、特別変わった事はなかったし、穏やかで紳士的だったわよ。
  込み入った話はしたことが無いので、どんな暮らし向きかしらないけれど、
  まあ、単なるお隣さんに過ぎないわよ。」

“隣に住んでいる私達より、よく知っているじゃない!”と内心思いながら、
私は当たり障りのない返事をした。

 1週間ほどして、噂も下火になった頃、かのヤーさんから電話が入った。
 「お母ちゃん!ずいぶん世話になったなあ。お父ちゃんにも礼、言う
  といてな。何か、困った事あれへんか? 遠慮せんとワシに言いや!」

 彼は彼なりに、精一杯の仁義を尽くしたのだろう。当然だが、それ以来、
電話が掛かって来たことはないし、勿論、出会ったことも無い。

posted by たかママ at 21:38 | Comment(0) | 日記
2010年03月10日

 「でも、5,000円て、安すぎない? 半日潰れたのよ。」
 「そりゃ、運送屋や引越し専門業者に頼んだら2,3万円は取られるさ。 
  隣人のよしみで、お金は要らないといったら、じゃあ、1万円を払うと
  言ったので、その半分を受け取ったと言う訳さ。」
 「そう言えば、出発の時、何か困ったことがあったら、力になるから、
  遠慮なく連絡くれって言っていたわ。」
 「車の中でも言っていたよ。彼らに何か頼んだら、後が高くつくかもしれ
  ないな。ま、万が一にもそんな事は無いと思うよ。」

 道々、彼は私達夫婦に、とても感謝していると言っていたという。
何処へ行っても、自分の生業が生業だけに、まともに相手にされたことが
なく、避けたり、無視されるのが常だったという。分け隔てなく、普通に
接してくれたのは私達夫婦が初めてだったそうだ。

 彼の引越したの知った近所の人達は、ホッとしたと口々に言ってきた。

 「あんたん所も、ややこしい人が引越さはって、良かったなあ。」 
 「いつまで、居てるんやろと心配してたんやわ。」

posted by たかママ at 22:38 | Comment(0) | 日記
2010年03月09日

5,000円

 出来るだけ、お隣さんと顔を合わさないようにしていた矢先、先方の方から
訪ねてきた。Kに用があるので、帰ったら教えて欲しいと言う。
 夕方、Kが帰ったのに気が付いたのか、再度やって来た。

 「ワシ、引っ越すことになったんやけど、荷物運んで欲しいねんけど、
  頼まれてんか。大して、荷物も無いねんけど、お父ちゃんが引きうけて
  くれたら助かるわ。お金はちゃんと払うさかい。」
 「良いですよ。お金はいいけど何時にしますか?
  引っ越すって、その家に買い手が付いたんですか?」
 「多分、そうやろな。留守番はもういいって言わはるんやから。ワシも
  お役ゴメンやという事や。お父ちゃんの都合のいい時でええし、頼むわ。」
  
 2日ほどして、箪笥やTV、冷蔵庫など、Kのトラックに積んで、ヤーさんは
助手席に乗り込んで引っ越して行った。引越し先は京都市内のアパートだった
そうな。費用は支払うと言うのを、むげに断るわけにもいかないので、彼の
申し出の半額を貰うことにしたという。

 「お金は要らないというと、彼のプライドが許さないだろうから、半額を
  貰っといたよ。」
ちなみに、半日、掛かった引越しの費用は5,000円だった。

posted by たかママ at 21:56 | Comment(0) | 日記
2010年03月07日

あねさん

 その後も、ヤーさんは毎日掃除に精出していて、開け放しの玄関の板の間
の廊下はピッカピカに光っていた。私や家族に対する態度も以前と変わら
なかった。一つだけ変化が有ったことといえば、私に呼びかけ方が変わった
のであった。
 引っ越してきた当初は一般的に“奥さん”と呼んでいた。程なくして、
“お母ちゃん”に変わった。今度は“あねさん”と呼ばれて、驚いて絶句して
しまった。仁侠映画の世界でしか聞いたことがない呼び方で、自分が呼ばれた
のである。これが、驚かずにいられようか。

 夕食後、Kにこのこと話した。
 「今日、お隣さんに“あねさん”て呼ばれて、ビックリしちゃった。最初は
  “奥さん” で、最近は“お母ちゃん”て呼ばれていたのに。その時も
  妙に馴れ馴れしくなってきたなあって、思っていたのよ。でも、これは
  関西では、お買い物に行ってもお店の人から、時々言われていたので
  別に気にならなったのよ。でも、“あねさん”はちょっとねぇ。」
 「う〜ん・・・。 そうだなあ。“あねさん”はちょっとなあ。近所の人に
  誤解されかねないしなあ。出来るだけ、顔を合わさないようにしたら?」
 「そうねぇ、それしかないわね。外の気配を確認してから、出掛けるように
  した方が良さそうね。」

posted by たかママ at 22:40 | Comment(0) | 日記
2010年03月04日

偶然

 最近では滅多に電車に乗る事はなかったのに、駅のホームで出会うなんて、
何という偶然だろうか。
 ヤーさんの方も私に気が付いたらしい。目が合ったので、何んとなく会釈を
したが、目を反らされ無視されてしまった。夜、この事をKに話した。

 「今日、駅のホームで偶然、お隣さんに出会ったので会釈をしたのに、
無視されたわ。どうしてかしら?」
 「自分の分をわきまえているからだろう。」
 「どういう意味? 家に居る時は親しげに話かけてくるじゃない?」
 「何処で誰が見ているか知れないし、きっと、自分の生業の事で堅気の
  一般人に迷惑を掛けちゃいけないと思って、気を遣ったんだろう。」
 「ふ〜ん、そういうもんなの。」
 「そういうもんんさ。今後は見かけても、こちらも知らん顔しておくんだな。
  お前も、近所の人に見られて、ヤーさんと親しげに話していたなんて
  噂されたら、嫌だろう。
  当たらず触らず、それが、お互いの為なんだからさ。」

 Kに言われて、住む世界が違うということはこういうことなんだと思った。

posted by たかママ at 21:54 | Comment(0) | 日記
2010年03月03日

返事

 「その件は、俺が直接断っておくから、お母さんは知らん顔してて
  いいいよ。」
 「そう、聞かれたら、お父さんに任せてあるって、返事しておくわ。でも、
  どうして現金なのかしら? 銀行ローンでも良いのにね。」
 「それは、現金が良いに決まってるさ。現金で決済したら、何パーセントか
  のマージンが自分に入るからさ。銀行ローンだと自分の取り分が取れない
  だろう?」
 「だけど、それって、違法じゃないの?」
 「違法かもしれないけど、彼らは隣の家のように借金で焦げ付いた物件に
  留守番と称して居座って、管理料の名目お金をとっているのさ。あるいは、
  現金で買いそうな人を探して、売れたら手数料を吹っかけるんだよ。
  だから、契約とか、お金に関することでは絶対に関らないようにしなく
  てはな。ちょっとでも隙を見せたら、付け込んで来るのから、お母さんも
  充分注意しろよ。」

 Kが上手く断ってくれたのか、この話は二度と持ち出される事はなかった。

 こんな事があった後、偶然、駅のホームでヤーさんに出くわした。バリッと
背広を着こなし、普段のクリカラモンモンの刺青は勿論、見えない。しかし、
派手な服をきていた訳でもないのに、何か違って見えたのは、気のせいだった
のかも知れない。

posted by たかママ at 22:56 | Comment(0) | 日記
2010年03月02日

800万円

 そんな矢先、かの、ヤーさんが私に言った。最初は、私の事を“奥さん”と
呼んでいたが、この頃は親しげに“おかあちゃん”と言うようになっていた。

 「おかあちゃん、この家、買わへんか?」
 「ええっ?どうして? おたくが留守番しているこの家のこと?」
 「そうや。どうや! 現金で800万円。 安いやろ?」
 「いくら安くても、無理だわ。うちも越してきたばかりだし、これ以上
  借金を背負うなんて出来ないし。」
 「全く同じ大きさやし、800万円は安いと思うで。無理かどうか、
  お父ちゃんと一度、相談してみてえや。」

 紆余曲折の上、やっとローンを組んでを今の家を手に入れたのである。
15年のローンも始まったばかりだ。相談するも何も、始めから無理な話だ。
 帰宅したKに、昼間のいきさつを話した。

 「昼間、隣を800万円で買わないかって言ってたわ。」
 「そんな事、出来るわけ無いじゃないか。それで、何て答えたんだ?」
 「うちも越してきたばかりだから、それとなく無理だといったのだけど、
  一度、お父さんと相談してみてって言ってたわよ。」

posted by たかママ at 22:44 | Comment(0) | 日記
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