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2009年10月29日

マッチ箱

 Mさんの家を見に行った。その町内は背中合わせに同じような小さな家が
11軒が横並びに建っている。 古びた木製のドアの横のチャイムを押すと、
待ちかねていた、Mさんがにこやかに迎え入れてくれた。

 北向きの玄関のドアを開けると左側に台所、右にトイレ。トイレの前に2階へ
上がる階段がある。間取りは1階が台所と4.5畳と6畳の和室、6畳の奥に
平行するように、廊下の左側が風呂場、右側が洗面所である。廊下に面した
サッシの引き戸を開けて驚いた。裏の家との境はブロック塀で仕切られていた。
しかし、裏の家は塀ぎりぎりに重ねるように波板で倉庫をしつらえてあった。
裏庭とはとても言い難い、猫の額ほどのスペースに洗濯機が置いてある。
2階が4.5畳と6畳の和室に物干しのベランダ。6畳の部屋にはもご丁寧に
床の間までついている。この小さな家に床の間が必要なのだろうか?

 ベランダは手を伸ばせば、裏の家のベランダに出が届きそうな近さである。
この町内は同時に立てられたと見え、どの家も同じ間取りだそうだ。文字通り
マッチ箱のような小さな家が建っていた。

posted by たかママ at 22:29 | Comment(0) | 日記
2009年10月28日

偶然

 「お父さん、少年野球の時の1年先輩のM君を覚えているでしょう?
  今日、スーパーで偶然にお母さんに会ったのよ。その時、突然、家を
  買わないか?って言われて、ビックリしたわ。」
 「どうして、Mさんが俺達が家を買う事を知っていたんだろう? お前が
  喋ったのか?」
 「話してないわよ。だから、驚いているのよ。」
 「単なる偶然か・・・。それにしても、この話はグッドタイミングかも知れないな。
  まだ、売りに出してないんだな?」
 「来週には広告を出す予定だそうよ。」
 「場所的には隣の町内だし、問題ないよな。家は知っているか? 一回、
  家の中を見せて貰ったらどうだろう? 間取りとか、中の改装にもお金が
  掛かるだろうし、決めるのは、その後でもいいだろう。」
 「そうねぇ、価格も折り合いがつくかどうか、分からないし、見てからでも
  遅くないわね。」
 「出せるお金は、例の示談金の100万円だけだから、俺達も弱いよな。
  俺も、明日、外観だけでも見ておくよ。」

 翌日、早速、Mさんに電話して、家を見せて貰うことにした。ようやく、
家を買うことが具体性を帯びてきた瞬間だった。

posted by たかママ at 21:18 | Comment(0) | 日記
2009年10月27日

タイミング

 いつもの買い物に行くスーパーで、サトが少年野球チームで一緒だった
一年先輩のMくんのお母さんに偶然出会った。久しぶりの再会に、お互い
に子供達の近況など話は尽きなかった
 
 「あんた、家買わへんか? まだ、竹薮の前の借家に居てはるんやろ?」
 
私は驚いた。なぜ、今のタイミングで家の話を彼女がするのか? 私達が家を
探している事を知ってて、言っているんだろうか?

 「ええっ! 突然、どうしたの?」
 「あんた、うちの家、知ってはるやろ。今度、近くに新築して引っ越すねん。
  そんで、誰か買うてくれへんかなて思うてな。ちょうど、あんたと出会う
  たし、聞いてみたんやわ。」
 「家を買うなんて、野菜や豆腐やお惣菜買うみたいに簡単にいかないわ。」
 「そうか? 安うしておくし、旦那さんと相談して考えてみてへんか?」

 私達に家を買う計画がある事は、おくびにも出さずに夫と話してみると返事
をして、Mさんと別れた。

posted by たかママ at 23:48 | Comment(0) | 日記
2009年10月25日

ほんまに?

 家を買う計画を子供達にも話した。サトは念願の自分だけの部屋が持てると
大喜びだ。前に、計画倒れに終わっていたので、サトは少し疑って掛かって
いた。
 
 「ほんまに? 家を買うの? 今度は間違いなく、買うんやね。僕だけの
  部屋もあるよね?」
 「そうだよ。お父さんも頑張って、今度こそ買うよ。今、校区内で、お母さんと
  一緒に一生懸命探しているから、もう少し待ってな。」
 「お母さん、私の部屋もあるん?」
 「勿論あるわよ。二人とも、自分の部屋が持てるような、今より少しは、
  大きい家を探しているからね。楽しみだね。」
 「私のお部屋が出来ると、一人で寝なくてはあかんの? そんなのややなぁ。
  でも、そうなったら、ベッドにしてね。」

 それからというもの、話題はまだ決まってない家の事で、持ち切りだった。 
サトはサトで、学校から帰ると、毎日のように開口一番聞いてくる。

 「お母さん、家、見つかった?」
 「まだよ。そう簡単に気に入った家は見つからないわよ。」
 「ふ〜ん、なんだ、まだか・・・。」

posted by たかママ at 21:47 | Comment(0) | 日記
2009年10月22日

物件

 Kは事故に遭ったのを忘れるような、以前にも増して忙しい日々を送って
いた。しかし、すっかり体調が戻ったわけではない。左右の首から肩にかけて、
石が詰まっているのではないかと思うくらい、硬くなって苦しそうだった。
毎日、シップ薬を貼ったりやチールを塗って、痛みや凝りを辛抱していた。

やはり、示談するのが早過ぎたのかもしれない。勢いで示談に踏み切った
Kの気持ちを考えると、話題にするのがはばかられ、黙って、見ているしか
なかった。

 家が欲しいなとか、買いたいなとか思って、広告を見ていると、良さそうな
物件がたくさんあった筈だった。しかし、家を買うつもりで探し始めると、現実
にはなかなか条件に合う物件が見つからなかった。
 Kが、回収の途中でよさそうな空き家を見つけると、電話をかけてくる。
電話を受けると、友禅の手を止めて外観だけでもと、私は見に行き、広告で
良さそうな家があると、早速見に行ったりした。
 「帯に短し、たすきに長しってとこで、なかなか気に入った家が見つから
  ないわねぇ。」
 「ま、焦らずにじっくり探すさ。俺にとっては一生に一度の高い買い物だしな。」

posted by たかママ at 22:02 | Comment(0) | 日記
2009年10月21日

現実味

 Kが“示談金を頭金にして家を買おうか”と言った事で、住宅購入が現実味
を帯びてきた。

 「サトも来年は高校受験だし、勉強部屋も用意してやりたいわ。今のままでは
  寝るのも勉強する所も同じ部屋だし、落ち着いて勉強できないわよねぇ。」
 「そうだなあ、近所で中古の売り家がないか、探してみるか。」
 「これ以上、転校させたくないわ。やっと、この地域に慣れてきた所だし、
  同じ学校区内で見つけたいわ。」
 「俺達も、今さら新しい地域に行って馴染むも大変だよ。この辺で条件に
  合う家が、きっと見つかるさ。」
 
 小さくても良い、せめて子供達に独立した部屋を与えてやりたかった。京都へ
来て4年、私達に余分な蓄えはなかった。月々の支払いはとにかく、文字通り、
示談金の100万円の頭金で買える物件でなければならなかった。
 
 方針が決まった以上、私は早く家を探したかった。ぐずぐずしていると、100万
円はなし崩しに無くなってしまうような気がしていた。そう決めてから、
毎日のように新聞の折り込み広告での家探しが始まった。

posted by たかママ at 21:45 | Comment(0) | 日記
2009年10月20日

示談

 Kも私も、交通事故の示談交渉なんて始めての事だった。特に、Kは
半ば疑われるような煩わしいことはもうたくさんとばかりに、示談に応じる
ことにした。
 この事が後になって、後悔することになろうとは、その時は思いも寄らな
かった。

 「本当に、示談に応じて大丈夫かしら? まだ、完全に良くなってない
  のに、 後になって悪くなったら困るんじゃないの?」
 「そうなったら、そうなったで、仕方ないさ。自分の健康保険で病院で診て
  貰うよ。ごちゃごちゃうるさくて、もう、うんざりだよ。それに、そろそろ仕事
  に復帰しても良いと思っていたので、ちょうど良いきっかけになったよ。」

 示談金は100万円の提示であった。私達は100万円もの大金を見たこと
がなかったので、それは、ものすごい大金のように思えた。それに、Kが痛い
思いをして手に入ったお金である。夢々、無駄には出来ない。入金になるのは
一ヵ月後だという。
 「お父さんが痛い思いをして、手に入ったお金だから、使い道が決まるまで、
  手付かずにして置かない? なし崩しに使ってしまったら、罰があたる
  わよね。」
 「うん、そうだな。家を買う時の頭金にでもするか・・・。」

posted by たかママ at 21:25 | Comment(0) | 日記
2009年10月18日

まんまと

 保険会社の担当者の言葉に、Kは顔色を変えた。

 “ああっ!このままでは、まんまと、このベテラン営業マンに乗せられて
  しまう。” 私は、Kの袖を強く引っ張ったが、後の祭りだった。

 「私はずるをしたり、ごまかしたりしてまで休業補償を貰おうとは思って
  ないですよ。お宅がそんなに疑うなら、もういいから示談しましょうか!
  疑われるなんて心外ですよ!」
Kは機嫌悪そうに、顔を真っ赤にしながら言った。
 「疑っているつもりは無いんです。病院で聞いたんですが、これ以上は
  日にち薬で徐々に治るって、言うてはりましたんでな。」

 今から、24、5年前の事だ。個人情報等、問題なかったのだろう。医師も
保険会社に聞かれるままに答えていたのだろう。
 一方、保険会社の担当者はしてやったりという表情で、カバンの中から
書類を取り出して、Kの前に差し出した。
 「早いとこ、示談に応じてくれはったんで、それ相応の示談金は用意します。
  分かってはると思うんですけど、示談をしてしまはったら、後になって、
  何か問題が起こっても、保障はできません。これは、承知しておいて
  ください。」

posted by たかママ at 21:28 | Comment(0) | 日記
2009年10月15日

誘導

 何時までも、I商店に集団回収を任せるわけにも行かないので、少しずつ、
小規模の回収から仕事に戻り始めることのした。勿論、私のサポート無しでは
無理だった。
 そんな矢先、事故を扱っている保険会社の担当者がやって来た。はじめは
身体の調子など聞いていたが、仕事の話に入って様子は一変した。
 「もう、すっかり身体の調子はええんとちゃいますか? 仕事もしてはるん
  ですやろ?」
 「は? 何を言ってるんですか? まだ、腰も首も痛いんですよ。まともに
  仕事が出来るわけないじゃないですか。」
 「いや、お宅のトラックが動いているのを見た人が居はるんですよ。仕事
  してはるんやったら、ちょっと、休業補償の方はねぇ・・・。」
 「車は契約の回収があるんで、同業の人に頼んで、行って貰っているので、
  動いていますよ。 何ですか? 働けるのに働いてないと、私が嘘を
  ついてるとでも言うんですか?」
 「そうは言うてまへんが、もう、そろそろ、示談して貰いたいと思うて
  ますんねんけど。」

 保険会社の担当者は、ベテランらしく休業補償を打ち切り、早く示談を
済ませたいらしく、言葉巧みに Kを誘導しているように見えた。

posted by たかママ at 23:43 | Comment(0) | 日記
2009年10月14日

悩み

 後日、リハビリから帰って来たKに聞いてみた。
  
 「この前、気にしていた身体の事、先生に聞いた?」
 「う〜ん。いや、聞いてない。」
 「どうして? あんなに気にしていたじゃない?」
 「それがさ、実は担当の先生、女医なんだよ。」
 「女医さんがどうかしたの?」
 「だって、やっぱり女の人にそんな事聞くの恥かしいだろ。だから、聞くの
  を止めたんだ。」
 「じゃあ、リハビリだけして、帰ってきたんだ。折角、病院に行ったのに、
  聞いてみたらよかったのに。事故の後遺症かもしれないし、もしかしたら、
  良い対処法を教えてくれたかもしれないじゃない?」
 「・・・・・・。」

 医者に男も女もないだろうに、ま、聞くほど真剣な問題でもないのは事実。
私はからかい半分に、Kの反応を楽しんでいた。 

 そんな、Kの真剣な悩み(?)も、いつしか時間と共に消えた。

posted by たかママ at 22:56 | Comment(0) | 日記
2009年10月13日

臨時休業

 トラックは修理を終え戻ってきた。荷台だけが新しくなって、すっかり事故の
痕跡はなくなっていた。
 トラックが戻ってきても、当然、仕事は臨時休業である。契約してある自治会や
子供会には、迷惑を掛けられない。私は各自治会や子供会に、事情を説明
して廻った。
 Kが動けるようになるまでの間、自治会や子供会の回収は同業の I 商店に
お願いする事にした。

 一ヶ月ほど通院しても、症状は一向に良くならなかった。体の症状にもまして、
精神的な痛手の方が大きかったようだ。Kは40歳になったばかり、働き盛りで
心身ともに血気盛んな年頃だ。性的欲求も、その限りでない。 しかし、自分の
気持ちに体が追い付かないのがもどかしく、いらいらしていた。
 「俺、どうかしちゃったのかなあ? 気持ちは有るんだけど、体が言う事を
  きかないんだよ。もう、駄目かもしれない。」

 男はつまらない事を気にするものなのだと、可笑しくなって、笑いがこみ
上げてきた。しかし、くそまじめなKの悩みを笑うわけにもいかず、私は
言った。
 「気のせいじゃないの? 事故のせいかもしれないわねぇ。そんなに気に
  なるんだったら、病院に行った時に、お医者さんに聞いてみたら?」

posted by たかママ at 21:37 | Comment(0) | 日記
2009年10月11日

修理

 2、3日して、保険会社の担当者がやってきた。休業補償や病院の事など
説明に来た。車は修理で対応するという。

 「荷台は潰れて、ラジエーターなんかも駄目になるほど、ひどい状態という
  のに、新車に替えてはいただけないんですか?」

私は、疑問に思って聞いてみた、
 「修理して使用可能な場合は、新車に替えることは出来ないんですよ。
  申し訳ないんですが、そういう決まりになっているんです。すんません
  なあ。」

中年の保険会社の担当者は答えた。
 「修理して、使えるようになっても、事故の衝撃であちこち傷んで、後で
  修理にお金が掛かるようになるかもねぇ。どうせなら、新車にしてくれたら
  良いのに・・・。」
 「まあ、そういう決まりだというから、仕方ないだろう。」
 「大幅な修理になるんでしょう?」
 「荷台はそっくり取り替えるって、ディーラーが言っていたなあ。」
 「それなら、なおの事新車にしてくれたらいいのにねえ。修理だと、時間も
  かかるしさ。」

posted by たかママ at 23:26 | Comment(0) | 日記
2009年10月08日

お詫び

 翌日、事故の加害者であるゲームメーカーの事故処理担当の総務部長と
当事者の運転手がお詫びの挨拶に来た。
 先方の丁寧な対応に、Kは感激して言った。
 「同じ、運転手同士、いつ、誰にでも起きるかもしれない事だから、あまり
  気にしないで下さい。不幸中の幸いというか、ひどい怪我はしてません
  ので、心配いりませんよ。」

 事故の補償等は保険会社に任せてあるので、今後は保険会社と話し合って
欲しいと言って戻って行った。
 「どうして、良い人ぶって、カッコいいことを言うのかな? 現実に、体は
  あちこち痛いというのに・・・。それに、車も使い物にならなくて、たちまち、
仕事に影響しているじゃない! 目に見えない怪我をしてないから、良いと
  いうものでもないでしょう?」
 「まあ、そう、きつい事いうなよ。保険会社でちゃんとしてくれると言うから、
  大丈夫だと思うよ。」
  
 始めのうちは、事故の後遺症も無いように見えたが、日を追うごとに鞭打ち
の症状がひどくなってきた。首より肩の筋を違えてしまったらしく、腕が
上がらないとか、腰が重たくてだるいとか言って、苦しそうだった。通院
しても、症状は良くならず、かなりイライラしていた。

posted by たかママ at 22:18 | Comment(0) | 日記
2009年10月07日

追突

 「参ったなぁ。ひどい目に遭っちゃった。」
疲労を顔ににじませながら、Kはため息を付いた。

国道は夕方のラッシュで渋滞気味だった。Kのトラックは停止線から2台目で
信号が変わるのを待っていた。ドンという音と共に、強い衝撃を体に感じたKは
慌ててブレーキを思い切り踏み込んだ。Kのトラックは、前のトラックに激しく
追突した。玉突き衝突事故である。
後ろの車は、某有名ゲームメーカーの大型の配送車両だ。居眠り運転だった
という。
 前のトラックはKと同型の1、5t車である。Kのトラックの追突の衝撃で荷台が
半分程、つぶれてしまっていた。Kのトラックは、前部のバンパーは吹っ飛び、
荷台は半分ほど押しつぶされ、ロープはちぎれ、積んでいた古紙が散乱して、
辺りはひどい有様だったという。そんな状況で、よく一人の怪我人が出なかった
ものだと、駆けつけた警察官は感心したそうだ。信号待ちの停車中の事故
だったので、思ったより、大事に至らなかったらしい。
警察の状況検分の後、救急車で病院へ行き、レントゲンや診察のを終えて、
帰ってきたという。
 診察の結果、頚椎と腰のむち打ちだという。当分の間、通院で様子を見る事に
なった。

posted by たかママ at 22:34 | Comment(0) | 日記
2009年10月06日

お釜

 突然、電話のベルが、夢中になって反物に向かっていた私の緊張の糸
が切れた。Kからだった。夕方の忙しい時間帯に電話が入るなんて珍しい
ことだった。

 「どうしたの? 今頃、電話なんて珍しいわね。」
 「俺、事故に遭った。交差点で赤信号で待っている時にお釜されたんだ。」
 「ええっ! 追突されたって、大丈夫なの? 怪我は?」
 「怪我はないけど、大丈夫じゃないみたいだよ。これから、警察に行って、
  事情聴取が終わったら、病院に行くから。今日は遅くなるから、心配しなくて
  いいよ。」
 「怪我はしてないのね。ホッとしたわ。車はどうなったの?」
 「トラックはサンドイッチを食らって、荷台がひしゃげて、ぺしゃんこになって
  しまったんだ。もう使い物にならないかもしれないな。」

 事故の連絡があってから、21時を過ぎても、Kは帰ってこなかった。まだ、
携帯電話が普及してなかった頃だ。気になりながらも、連絡の取りようが
無かった。
 Kはその日の深夜、タクシーで帰って来た。

posted by たかママ at 21:30 | Comment(0) | 日記
2009年10月04日

お化け

 「最近、そこの古い倉庫で首吊り騒ぎがあったでしょう。K君はそこの前を
  通って帰るんだけど、怖くて一人では行けないって言うから、僕が付いて
  いってあげたんだよ。」
 「怖いって言ったって、車も通っているし、特別暗いわけでもないでしょう?」
 「夜、そこを通ると首を吊った人が化けて出るかもしれないって、学校で
  友達に言われたんやで。それで、K君が怖くなって、僕に途中まで付いて
  来てくれへんかて言うから。」
 「ふーん、そうなの。でも、毎回サトが送って行くの? お家の人に迎えに
  来て貰うとか、違う道を行くとか、他の方法があるでしょうに。それに、
  今まで散々、サトをいじめていてさ。今度は怖いから、付いて来てなんて、
  ずいぶん虫のいい話ね。」
 「もう、意地悪はしなくなったから、心配しなくてもいいよ。それにあいつ、
  結構気が弱いんだ。信号のとこまでだから、すぐだし、僕はかまへんから。」  

側でサトと私のやり取りを聞いていたタエが聞いた。
 「お兄ちゃん、あそこ、お化け出るん?怖いなぁ。」
 「出えへん、出えへん。怖ないし、タエは心配せんでも大丈夫やで。」

posted by たかママ at 21:48 | Comment(0) | 日記
2009年10月01日

案外

 昨日からいじめっ子のK君が入塾して来たと言って、サトは出かけて行った。
最近は学校でもいじめれたということは無くなって、ホッとしていた。しかし、
よりによって、同じ塾に入って来なくてもいいのに。また、いじめられは
しないか? 帰ってくるまで気になって仕方がなかった。
  
 「お母さん、K君をそこの信号の所まで、ちょっと、送ってくる!」
 「ちょっと! サト! 待ってよ。 送ってくるって! どこ行くの!?」
塾から帰ったサトは“ただいま”も、そこそこにカバンを置いて、また自転車に
飛び乗って行ってしまった。
 5分程で、サトは、
「ほんまに、世話の焼ける奴やな。」
と言いながら、慌てて戻って来た。
 
 「K君て、さっき言っていたいじめっ子のK君でしょう?」
 「いじめっ子、いじめっ子って、言わないでよ。もう、いじめなくなったん
  だから。」
 「でも、どうしてサトが送って行かなくてはいけないの? あの子の方が
  サトよりずっと大きいじゃない。」
 「あいつ、図体でかいくせに案外怖がりやし、気が小ちゃいんや。」
 「だからって、何もサトが送っていく事はないと思うけど?」
  
posted by たかママ at 21:45 | Comment(0) | 日記
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