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2009年11月08日

ローン

 ローンを組んだ経験の無い私達は、銀行に断られてしまったら、
他に成す術が無いと思っていた。“銀行ローンが組めない”と、不動産屋
から連絡を受けた私はすがる思いで言った。
 「銀行ローンが駄目だと、諦めるしかないでしょうね。他に方法は有りません
  よね?」
 「いやいや、銀行が駄目なら、信販という手もありますよ。銀行に比べて、
  審査は緩いですが、その分利率が少し高くなりますけど、一度、書類を
  提出してみはりますか?」

 Kは、信販会社の住宅ローンに抵抗感があるようだった。今では、クレジット
カードや消費者ローンなど珍しくもないが、その頃は自分の生活とは関係がない
ことのような気がしていた。

 「信販てサラ金と違うのか? そういう所でローンを組んで大丈夫だろうか?」
 「自営業の人は、収入の関係で銀行ローンが通らない事が多いらしいわよ。
  そういう人が、信販を利用してローンを組むのは珍しくないそうよ。
  銀行も提携している信販会社を紹介する例もあるんだって。お父さんが
  信販を利用するのが、どうしても嫌って言うなら、止めてもいいわよ。」

posted by たかママ at 21:23 | Comment(0) | 日記
2009年11月05日

5年目

 取りあえず、家族の意見が一致したので、Mさんに連絡を取って、不動産屋
に会う事にした。購入手続きに必要な書類を揃えるのは私の仕事だ。収入の
証明、印鑑証明等々、仕事をそっちのけで走り回った。

 京都へ来て、やっと5年目に入ったところだ。自営業になって実績もない。
前回、両親との同居の問題が白紙になった時点で、収入の裏付けが必要に
なった時のために、廃品回収業の収入を確定申告していた。私の友禅の
収入は、Kの収入に合算して申告して、私は専従者従業員として、給料を
貰う形にしたのだった。この確定申告書3年分の写しが収入証明になった。

 契約手続きに入って、実績が短いということと、収入が不安定ということも
あったのか、銀行の融資が降りなかった。
 銀行ローンが受けられないということは、今度もまた家を買うことを諦め
なければならないかも知れない。私は気落ちしてしまった。
 
 「今度も、駄目かしら?
  私達は一生、家を持つ事は無理なのかしらねぇ・・・。」
 
私は何度も、溜息をついた。

posted by たかママ at 22:13 | Comment(0) | 日記
2009年11月04日

地域

 「価格も50万円引いてくれるそうよ。頭金も私達の言う金額でいいん
  だって。」
 
 Mさんが新築の家に引っ越して、空き家になったので、皆で見に行った。
私はやはり、風呂の狭さにこだわって、それだけで買うのを止めたくなって
いた。Kは、地域が気に入っていた。私鉄とJRの中間地点にあり、どの駅
にも10分足らずで行ける。市役所、銀行なども隣接していて、この町のほぼ
中心地の住宅地である。

 「この辺は便利だし、しばらく、このまま住んで、何年か経ってから、改築
  してもいいんじゃないかな? お風呂もトイレも改装してもらったら、良く
  なるよ。俺達にはこのくらいが分相応ってとこだろう。」

 タエは2階があるので、大喜びで上ったり降りたり、おおはしゃぎだ。
 「お母さん、お母さん、2階があるよ。私の部屋は2階やね?」

 サトは背中合わせになっているOさんの家が気になっていたらしく、
南側のベランダ越しに覗いてしきりに確認していた。Oさんの家は斜め後で
あまり、気にしなくても良さそうで、ホッとしていた。

posted by たかママ at 22:26 | Comment(0) | 日記
2009年11月03日

裏の家

 「しかし、俺達の条件では、これくらいが分相応ってとこだろうな。お母さん
  が納得できるんだったら、俺は文句ないよ。」 

サトが突然、口を挟んだ。
 「お母さん、M君の家の裏の家は、もしかしてOさんの家とちゃう?」
 「Oさんって、小学校の時の同級生の女の子のTちゃんのこと?」
 「そうだよ。それだったら、そこの家、僕はいやや。」
 「どうして、嫌なんだ?」
 「お父さん、そいつ、クラスで一番の乱暴者だったんだよ。」
 「だって、女の子でしょう?」
 「そう、男子の中でも、一番の嫌われ者だったんだ。大声で怒鳴るし、
  机や椅子は蹴飛ばすし、男の子も皆、怖がっていたんだ。」
 「でも、裏だし、ほとんど顔を合わせる事もないないと思うよ。」
 「サトの気持ちが分からない訳ではないけど、お父さんにとって、一生に
  一度の大事な事なんだ。今度のチャンスを逃がしたら、二度と家を買う
  チャンスは無いと思うんだ。お父さんにもっと力とお金があれば、もう少し
  大きな家を買えるかも知れないけどな。とにかく、一回、皆で見に行って
  から、最終的な結論は出そうよ。」

posted by たかママ at 20:58 | Comment(0) | 日記
2009年11月01日

正方形

 私が一番驚いたのは、お風呂の狭さであった。広さは1畳ほどで、正方形
の浴槽と残りの半分は洗い場である。以前にも、友人の家で同じ状況を見た
ことを思い出した。

 「これでは、ゆっくり足を伸ばして入る事は出来ないわね。」
  との私の問いに、彼女は済まして答えていた。
 「そやけど、水は少なくて済むし、早く沸くし、経済的やで。それに、足は
  伸ばせなくても、膝抱いて入ったらええのんや。」

 一通り室内を見せてもらって、家族で相談した後、返事をするということで
Mさん宅を失礼した。

 夕食後、皆で話し合った。Kも子供達も、私の感想を心待ちにしていた。
 「家は小さいけど、建付けはしっかりしていたわよ。安普請の建売住宅の
  場合、階段を上がって行くと、何となく揺れるような不安定は感じがする
  でしょう? そんな事はなかったわね。室内は改装するようになると思う
  から良いけど、でも、お風呂がねぇ・・・。それに、トイレも和式の汲み取り
  だったの。」

posted by たかママ at 21:17 | Comment(0) | 日記
2009年10月29日

マッチ箱

 Mさんの家を見に行った。その町内は背中合わせに同じような小さな家が
11軒が横並びに建っている。 古びた木製のドアの横のチャイムを押すと、
待ちかねていた、Mさんがにこやかに迎え入れてくれた。

 北向きの玄関のドアを開けると左側に台所、右にトイレ。トイレの前に2階へ
上がる階段がある。間取りは1階が台所と4.5畳と6畳の和室、6畳の奥に
平行するように、廊下の左側が風呂場、右側が洗面所である。廊下に面した
サッシの引き戸を開けて驚いた。裏の家との境はブロック塀で仕切られていた。
しかし、裏の家は塀ぎりぎりに重ねるように波板で倉庫をしつらえてあった。
裏庭とはとても言い難い、猫の額ほどのスペースに洗濯機が置いてある。
2階が4.5畳と6畳の和室に物干しのベランダ。6畳の部屋にはもご丁寧に
床の間までついている。この小さな家に床の間が必要なのだろうか?

 ベランダは手を伸ばせば、裏の家のベランダに出が届きそうな近さである。
この町内は同時に立てられたと見え、どの家も同じ間取りだそうだ。文字通り
マッチ箱のような小さな家が建っていた。

posted by たかママ at 22:29 | Comment(0) | 日記
2009年10月28日

偶然

 「お父さん、少年野球の時の1年先輩のM君を覚えているでしょう?
  今日、スーパーで偶然にお母さんに会ったのよ。その時、突然、家を
  買わないか?って言われて、ビックリしたわ。」
 「どうして、Mさんが俺達が家を買う事を知っていたんだろう? お前が
  喋ったのか?」
 「話してないわよ。だから、驚いているのよ。」
 「単なる偶然か・・・。それにしても、この話はグッドタイミングかも知れないな。
  まだ、売りに出してないんだな?」
 「来週には広告を出す予定だそうよ。」
 「場所的には隣の町内だし、問題ないよな。家は知っているか? 一回、
  家の中を見せて貰ったらどうだろう? 間取りとか、中の改装にもお金が
  掛かるだろうし、決めるのは、その後でもいいだろう。」
 「そうねぇ、価格も折り合いがつくかどうか、分からないし、見てからでも
  遅くないわね。」
 「出せるお金は、例の示談金の100万円だけだから、俺達も弱いよな。
  俺も、明日、外観だけでも見ておくよ。」

 翌日、早速、Mさんに電話して、家を見せて貰うことにした。ようやく、
家を買うことが具体性を帯びてきた瞬間だった。

posted by たかママ at 21:18 | Comment(0) | 日記
2009年10月27日

タイミング

 いつもの買い物に行くスーパーで、サトが少年野球チームで一緒だった
一年先輩のMくんのお母さんに偶然出会った。久しぶりの再会に、お互い
に子供達の近況など話は尽きなかった
 
 「あんた、家買わへんか? まだ、竹薮の前の借家に居てはるんやろ?」
 
私は驚いた。なぜ、今のタイミングで家の話を彼女がするのか? 私達が家を
探している事を知ってて、言っているんだろうか?

 「ええっ! 突然、どうしたの?」
 「あんた、うちの家、知ってはるやろ。今度、近くに新築して引っ越すねん。
  そんで、誰か買うてくれへんかなて思うてな。ちょうど、あんたと出会う
  たし、聞いてみたんやわ。」
 「家を買うなんて、野菜や豆腐やお惣菜買うみたいに簡単にいかないわ。」
 「そうか? 安うしておくし、旦那さんと相談して考えてみてへんか?」

 私達に家を買う計画がある事は、おくびにも出さずに夫と話してみると返事
をして、Mさんと別れた。

posted by たかママ at 23:48 | Comment(0) | 日記
2009年10月25日

ほんまに?

 家を買う計画を子供達にも話した。サトは念願の自分だけの部屋が持てると
大喜びだ。前に、計画倒れに終わっていたので、サトは少し疑って掛かって
いた。
 
 「ほんまに? 家を買うの? 今度は間違いなく、買うんやね。僕だけの
  部屋もあるよね?」
 「そうだよ。お父さんも頑張って、今度こそ買うよ。今、校区内で、お母さんと
  一緒に一生懸命探しているから、もう少し待ってな。」
 「お母さん、私の部屋もあるん?」
 「勿論あるわよ。二人とも、自分の部屋が持てるような、今より少しは、
  大きい家を探しているからね。楽しみだね。」
 「私のお部屋が出来ると、一人で寝なくてはあかんの? そんなのややなぁ。
  でも、そうなったら、ベッドにしてね。」

 それからというもの、話題はまだ決まってない家の事で、持ち切りだった。 
サトはサトで、学校から帰ると、毎日のように開口一番聞いてくる。

 「お母さん、家、見つかった?」
 「まだよ。そう簡単に気に入った家は見つからないわよ。」
 「ふ〜ん、なんだ、まだか・・・。」

posted by たかママ at 21:47 | Comment(0) | 日記
2009年10月22日

物件

 Kは事故に遭ったのを忘れるような、以前にも増して忙しい日々を送って
いた。しかし、すっかり体調が戻ったわけではない。左右の首から肩にかけて、
石が詰まっているのではないかと思うくらい、硬くなって苦しそうだった。
毎日、シップ薬を貼ったりやチールを塗って、痛みや凝りを辛抱していた。

やはり、示談するのが早過ぎたのかもしれない。勢いで示談に踏み切った
Kの気持ちを考えると、話題にするのがはばかられ、黙って、見ているしか
なかった。

 家が欲しいなとか、買いたいなとか思って、広告を見ていると、良さそうな
物件がたくさんあった筈だった。しかし、家を買うつもりで探し始めると、現実
にはなかなか条件に合う物件が見つからなかった。
 Kが、回収の途中でよさそうな空き家を見つけると、電話をかけてくる。
電話を受けると、友禅の手を止めて外観だけでもと、私は見に行き、広告で
良さそうな家があると、早速見に行ったりした。
 「帯に短し、たすきに長しってとこで、なかなか気に入った家が見つから
  ないわねぇ。」
 「ま、焦らずにじっくり探すさ。俺にとっては一生に一度の高い買い物だしな。」

posted by たかママ at 22:02 | Comment(0) | 日記